東京地方裁判所 平成11年(ワ)19256号 判決
原告 金錦香
原告 馬真由美
右両名訴訟代理人弁護士 岩本公雄
同 若林実
被告 東京商銀信用組合
右代表者代表理事 金聖中
右訴訟代理人弁護士 山岸哲男
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第一原告らの請求
被告は、原告らに対し、別紙物件目録記載の建物について、別紙登記目録一ないし三記載の各登記の抹消登記手続をせよ。
第二事案の概要
本件は、原告らが、原告らの共有の建物につき設定された根抵当権設定登記等について、継続的金融取引契約(信用組合取引)の終了を主張し、その抹消登記手続を請求した事案である。
一 争いのない事実等(末尾に証拠等を掲記するもの以外は争いがない。)
1 別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)は、もと亡馬宇楽(以下「宇楽」という。)の所有であったところ、宇楽は平成七年九月二八日死亡し、原告らは本件建物を持分二分の一宛の割合で相続した。
2 宇楽は、昭和五三年一二月六日、被告との間において、本件建物について、極度額を六〇〇〇万円、債権の範囲を信用組合取引、手形債権、小切手債権、保証委託取引とする根抵当権を設定する旨の契約及び右根抵当権の確定債権の債務不履行を条件とする賃借権を設定する旨の契約をそれぞれ締結し、同月八日、別紙登記目録一及び三記載の各登記手続をした(根抵当権設定契約の債権の範囲につき、甲一)。
3 宇楽は、平成四年七月一日、右根抵当権の極度額を九〇〇〇万円に変更する旨の契約を締結し(右極度額変更後の根抵当権を、以下「本件根抵当権」という。)、同月三日、同登記目録二記載の登記手続をした。
4 宇楽は、平成六年六月二九日、被告に対し、自己と被告との間の継続的金融取引によって、同日現在被告に負担していた宇楽自身の貸金債務の全額である六三二三万一六一六円を弁済した。
二 争点
本件根抵当権の消滅の有無
(原告らの主張等)
1 宇楽は、前記一の4の際に、被告に対し、自己と被告との間の継続的金融取引の終了を申し入れるとともに、本件根抵当権に関する別紙登記目録記載の各登記の抹消登記手続を求めた。
2 被告の後記2の主張事実は否認する。
(被告の認否及び主張)
1 右1の主張事実は否認する。
2 被告と宇楽との間の信用組合取引は、次のとおり、平成六年六月二九日以降も継続していた。
(一) 被告は、平成三年一二月二六日、李明浩(以下「李」という。)に対し、七〇〇〇万円を、最終弁済期は平成九年一月五日と定めて貸し付け、その際、宇楽は、被告に対し、李の右貸金債務を連帯保証した。
(二) 平成六年六月二九日当時、李の右貸金債務及び宇楽の右連帯保証債務は完済されていなかった。
第三当裁判所の判断
一 宇楽の継続的金融取引の終了の申入れ等について
甲第七号証(吉田幸夫こと馬乗楽作成の陳述書)には、宇楽は、平成六年六月二九日、被告に対し、自己と被告との間の継続的金融取引によって、同日現在被告に負担していた自己自身の貸金債務の全額である六三二三万一六一六円を弁済し、その際、被告に対し、被告との間の継続的金融取引の終了を告げた旨の記載がある。
しかし、右のように、宇楽が被告に対し、被告との間の継続的金融取引の終了を告げたとしても、後記二のとおり、宇楽と被告との間の継続的金融取引(信用組合取引)が終了したとはいえないし、本件根抵当権が被担保債権の存在しないまま確定したともいえない。
二 宇楽と被告との間の信用組合取引について
1 証拠(甲四ないし六、乙一、三、四)によれば、次の事実が認められる。
(一) 被告は、平成三年一二月二六日、李に対し、七〇〇〇万円を、最終弁済期は平成九年一月五日と定めて貸し付け、その際、宇楽は、被告に対し、李の右貸金債務を連帯保証した。平成六年六月二九日当時、李の右貸金債務は完済されていなかった。
(二) 被告は、平成六年八月一九日、李に対し、六六二〇万円を、最終弁済期は平成一七年四月五日と定めて貸し付け、その際、宇楽は、被告に対し、李の右貸金債務を連帯保証した。被告は、同日、李から、右(一)の貸金債務残金五六二六万七六二二円の弁済を受けた。
(三) 被告は、平成七年六月二八日、李に対し、二〇〇〇万円を、最終弁済期は平成一七年四月五日と定めて貸し付け、その際、宇楽は、被告に対し、李の右貸金債務を連帯保証した。
(四) また、宇楽は、平成六年一二月二八日、李が被告との間の信用組合取引等に基づいて負担する債務について、期間は平成九年一一月三〇日まで、限度額は五〇〇万円及びこれに付帯する利息、損害金等の限度で連帯保証した。
2 信用組合取引とは、法定された信用組合の業務に関する取引を意味するものであるところ、信用組合が債権者として根抵当債務者と連帯保証契約を締結することは、信用組合の業務である組合員等に対する貸付け等に附帯する事業に当たるものと解される。そうすると、被告が宇楽に対し同人の前記各右連帯保証に基づいて有する債権は、宇楽と被告との間の信用組合取引により生じた債権に当たるのであって、本件根抵当権の被担保債権に含まれると解される(最高裁判所平成五年一月一九日第三小法廷判決・民集四七巻一号四一頁参照)。
したがって、宇楽と被告との間の信用組合取引は、平成六年六月二九日以降も継続していたものというべきである。
三 右によれば、本件根抵当権は消滅したとはいえないのであって、原告らが被告に対し前記各登記の抹消登記手続を求めることはできない。
第四結論
よって、原告らの本訴請求は理由がないから棄却する。
(裁判官 丸山昌一)
物件目録
東京都新宿区百人町一丁目六六番地
家屋番号 六六番二七
鉄筋コンクリート造陸屋根地下一階付三階建
床面積 一階 一二七・四〇平方メートル
二階 一二七・四〇平方メートル
三階 九三・四五平方メートル
地下一階 一二七・四〇平方メートル
(以上)
登記目録
一 東京法務局新宿出張所昭和五三年一二月八日受付第四四五六〇号根抵当権設定登記
二 同出張所平成四年七月三日受付第一九二四二号根抵当権変更登記
三 同出張所昭和五三年一二月八日受付第四四五六一号条件付賃借権設定仮登記
(以上)